俺が彼女に振られた後の話

4こ下の彼女に振られた。いきつけの喫茶店でのことだった。また俺が些細なことでイライラモードに入ったせいだ。そんな話の流れの中で振られた。本当は彼女の就職祝いをする楽しい日のはずだった。

振られて始めて、振られる前までぼんやりと抱えていた問題や、彼女の本音をやっとの思いで聞き出せた気がする。そしてそれを自分への戒めとしてここに記すことにした。

1.彼氏彼女にも一定の距離感が必要

俺は彼女為に何かしてあげたいたいと常に思っていたし、表現して伝えていた。
ただ彼女は、彼氏彼女の関係の中で、何かしてあげたいとかされたいとか、そういうことはあまり思わないそうだ。
俺が良かれと思ってやっていたことが裏目にでていた。
しかし、これは本当は必要なことだと思っている。言葉にする必要がないだけで。

彼女にとって、理想の彼氏彼女の関係とは何か問うたが、明確な返答はなかった。その中でたどたどしく答えたのは、恋人の関係にも一定の距離感が必要だということだ。言葉だけであれば納得できる。だが、俺が置かれた状況下では納得できなかった。それについて綴っていくが、彼女のその言葉は、結局誰とも付き合わない方がいいという結論に達してしまう恐れしか含んでいないように感じられた。それは寂しいことだと思った。

彼女はこう言う。毎日メールしたり、毎週必ず会ったりする必要なんてない。エッチなことは体が心配で苦手だし。そんなにイチャイチャしたいとも思わない。だから、一般的な彼氏彼女の関係は私には向いていない。私が変わっているのは分かっていて、あなたが私に望む姿になって欲しいのも分かる。でも、変えられない。自分勝手だし子どもだなと思うけど、それが私だから。

やっと聞けた本音の一部だった。彼女は自分を変えたくないのだ。20年と少し生きてきて培われた自分といものが変わることが想像できないのだ。俺とは育ってきた環境も違えば、考え方も違う。彼女はその点を強調しているように感じた。

それを価値観の違いと彼女は言い。また、決定的で埋めようのないものだと言った。趣味や楽しいと感じることの感覚は似ているとしても、だ。そして俺は振られた。言いたいことはたくさんあったが、みっともないことはしたくなかった。さよならだね、と力なく答え、喫茶店を後にしたが、俺の頭の中はしっちゃかめっちゃかだった。

俺は、別れる時になってやっと本音で語りだしやがった、という心境だった。彼女とは付き合って1年半になる。彼女にとって、長期的に男と付き合うのは俺が始めてだった。最近は停滞期に入ったような感じで、俺の中にも不満は溜まっていた。それでも、なけなしの恋愛経験から、彼女とは問題はありながらもずっとやっていけると思っていた。しかし、こうも簡単に振られるとは思っていなかった。俺はいつも彼女のことを真剣に考えていたからこそ、ショックだった。気難しい女の子だった。でも好きだった。

無言で駅まで歩く道のりは苦しかった。しかし、俺は彼女を改札前で引き止め「振られた後だからこそできる話」をすると決心した。そして、大好きな彼女に本当のさよならを言おうと思った。


2.ありのままの私を受け入れると言ったのは嘘なのか

彼女は淡白である。彼氏彼女の関係の中で、男が淡白というのですれ違いがおき、別れてしまうなんてのはよくある話だが、我々は逆である。

付き合い始めは俺も本気で彼女のことを受け入れられると思っていたし、実際不安はまったくなかった。メールも毎日したし、彼女から甘えてくることもあれば、好きだよと言葉でも表現をしてくれていた。まったく淡白だなんて思わなかった。多少の不満はあっても、彼女は本当にいい子で可愛くて、大好きだった。

最近、俺にとっては当たり前だったことがなくなっていた。メールは男のやりとりみたいだし、性的な営みも仕方なく付き合っているような感じだった。(性的なことに関しては当初から嫌悪をよく示していたが、最近は輪にかけて酷くなっていた)毎回俺の方から今日は大丈夫か恐る恐る切り出さねばならなかったので、雰囲気なんてあったものではなかった。付き合い始めはイチャイチャするためだけにホテルにも行ったりしたが、もうそんなことはできないだろうと感じていた。
そういったことが重なり、俺は無闇に不安になることが多くなった。恋人という関係に慣れ始めてからの変化に、俺は順応できなかった。そして、些細なことで彼女にあたるようになった。
根っこが大人しく、ケンカするのが下手くそな2人で、そんな時はどちらかが無言になってしまい、本音でぶつかるようなイサギの良いケンカにはならなかった。

俺はそんな彼女に変わってもらいたいと想っていた。彼女を変えられると信じていた。そうして知らず知らずのうちに、「もっと本音で話そう」「もう少し俺のことを考えて欲しい」というような言葉をかけるようになっていた。
彼女からしてみれば、付き合い始めは相当にがんばっていた状態であり、現在の彼女が本当の姿だった。ありのままの彼女だった。

つまり俺は「君は普通ではなく変わっているから、俺の望むように変わってくれ」と押し付け始めていたのだった。それが2人のためだと思い込んでいた。彼女はそれが辛かったのだ。
淡白になりだした彼女には、思い返せば、彼女なりの配慮があった。毎週俺のために時間を割いてくれること、愚痴を聞いてくれること、長い買い物も嫌な顔せず付き合ってくれること。そして、口には出さないけれど、俺を想ってくれていた。当然のことかもしれないが、それを忘れてしまっていた。

彼女はありままの自分を否定されていると感じていた。要は、最初と話が違う、と。ありのままの私を受け入れると言ったじゃないか、と。ポツリポツリと勇気を出して話してくれた。
付き合いはじめた大きな理由の一つが、俺が彼女の素の部分を良いところだと評したからなのだ。

駅の改札前で、またひとつ彼女の本音を聞くことができた。俺が押し付けがましかった部分、忘れてしまったことが少なからずあり、俺はそれに気づき反省することができた。俺には「いい人でありたい願望」があって、相手の気持ちを汲みながらより良い方向性を考えようとする癖があった。それが今回は仇になり、彼女に望まないものを強要していた。というか、俺の我儘を押し付けていただけだっと気づいたのだった。

彼女は前にいた彼氏とも、今回と同じ理由で別れている。俺はその点も含めて彼女のことが、その将来が本当に心配だった。

お互い相手に合わせるのが難しい。だから別れる。単純な話だった。

でもやはり、今回別れることになってはしまったが、彼女には伝えたいことがあった。

俺は彼女の一般的ではない価値観が心配なのだと真剣に説いた。俺と別れるのは仕方ないが、今後俺以外の新しい恋人ができた時、家族が欲しくなった時、お互いの未来を2人で一緒に考えなければ、絶対上手くいかない。幸せになんてなれない。1人で生きていく幸せもあるかもしれないが、俺は君にそうなって欲しくない。と伝えた。言っていることは付き合ってる時と同じだったかもしれない。しかし、今回は強要ではなく、俺からの最後のアドバイスだった。振られた後だったからこそ言い切れた言葉だった。

彼女の表情が少しずつ変わり始めていた。そんな気がしただけかもしれないが、俺にはそう見えた。

これは契約更新が必要なんだと思った。突拍子もない表現だが、一言で言えばそういう時期がきたのだ。唐突に考えが変わった瞬間だった。本当にさよならするつもりだった。

3.お互いの本当の気持ちはなんだろう

急に振られた訳だけれど、結論としては別れるのは保留になった。いわゆる距離を置こうというやつだ。

根本的な原因としては男女関係に対する考え方の違いなのだけど、急に振られた直接的な原因は俺の些細なイライラに起因するものだ。

振られた後に、ここまで書いてきたような本音トークができて、話してるうちに俺も彼女も真剣に相手のことを考えた上ですれ違ってるということが分かった。

最後に見えた表情の変化で、俺は揺らいだ。距離を置いて考えようと言うかどうか本当に迷った。何も変わらないかもしれないからだ。またお互い苦しむだけかもしれない。

しかし、もう一度お互い頭の中を整理する時間をとろうと伝えた。別れるのは余りにも急だし、お互いここまで話せて変化があったと感じたのは事実。

お互いもう一度考えよう。少しゆっくりしよう。そんな話をした。

彼女は心なしか安心した表情で、「うん、うん」と言ってくれた。久しぶりに少し彼女と通じあえた気がした。彼女も俺も、自分の気持ちにまったく整理がついていなかった。そして、まがいなりにも積み上げてきた2人の時間がこんな簡単に終わってしまうのは嫌だった。2人とも年単位での付き合いなんてしたことがなかったし、ここが一つのターニングポイントなのだろうと直感的に思った。彼女もまたそう思ってくれていることを信じている。

4.今後について

とりあえず一ヶ月間、一切連絡も取らないし会いもしないと決めた。その結果どうなるかなんて分からないし、またすぐ別れ話をしてさよならになるかもしれない。

俺が考えなくちゃいけないのは、2人でいるということを難しいと感じてまで一緒にいるべきなのかどうか、ということだ。今後もまた同じような問題が出ることは目に見えているから。何か2人のルールでも決めて、のらりくらりとやっていけばいいのだろうか。

まぁ時間はできたことだし、ゆっくり考えよう。後は、自分の視野を広げることをしたいなと。