完全に彼女に振られた話のその先の話

※このブログへお越しの、男女問わず恋愛に悩める方々へ

 時系列に沿って、最も古い記事から読むことをお勧めします。お時間があれば。

 コチラです→俺が彼女に振られた後の話 - 俺ときどき僕


12月。街は冬を間近に控え、年末独特のざわめきと、凛と澄んだ空気が物寂しく雑居していた。

彼女と会えなくなった僕は、その穴を埋めるように週末に予定を入れ、少しでも多くの時間を誰かと過ごそうとした。

仕事のある平日全て、飲みに行った週もあった。

楽しくはあったが、そんな無茶が長く続くはずもなく、最近は一人で過ごす時間が増えた。寂しいかと言われればそうかもしれないが、何だか振り出しに戻ったような、多少の清々しさもあった。

クリスマスどうしようかなーとぼんやり考えたりもしているが、最近は仕事が忙しく、プライベートのことにまで頭が回らないような状況だった。

時が経てば表面上の傷が治るように、心の傷もゆっくりと癒えていく。
それでも僕がまだ彼女との未来を考えるのは、結局全てが終わってはいなかったからだ。


彼女と徹底的に話し合い、完全に振られたと思っていた僕だったが、どうやらそれは僕の思い違いだったようだ。

そして、その思い違いゆえに、僕は彼女に心無い言葉を伝えてしまったようで、結局事態は有耶無耶になってしまっている。


本当は振られていなかったのかどうかが有耶無耶。


彼女が次にいつ連絡をくれるのかが有耶無耶。


彼女が僕とまだやり直そうと考えているかが有耶無耶。


僕が彼女をまだ好きなのかどうかが、有耶無耶。


話は10月の終わりに遡る。
前回のブログで書いたように、僕は彼女とはもうだめだと思った。
その反面、実は別れることを僕はまだ認めてはいなかった。

話し合いは、端的に言えば、彼女は別れたい、僕は別れたくないの平行線を辿った。僕は付き合っていないのと同じではないかというほどの様々な譲歩を提案した。

メールは週一回程度でいい。遊ぶのはお互い気が向いた時だけでいい。無理に毎週会う必要はない。エッチなことはしない。するのは旅行に行った時だけ。

そんな話をした。まったくもって、一般的には恋人と言えないような関係性の提示だった。そんな馬鹿らしい話を持ち出すほど、僕は彼女のことが好きだった。

彼女の反応は「だったら友達でいいじゃない」一辺倒だった。
僕はそれに対しての反論を持ち合わせていなかった。

なぜならそれは彼女と一緒にいるための譲歩であって、僕の気持ではないからだ。そこまでしてでも一緒にいたいという気持ちが、果たして彼女に伝わっていたかは分からない。

彼女はこう言うのだった。

「そんな風に譲歩してもらったとしても、あなたは必ずどこかで私が変わることに期待している。あなたが望む理想の彼女に近づくと信じているから、そういうことが言える。だから、きっと私が変わらなかったらまた同じようにお互いが苦しむだけ。潜在的に私に変化を期待するのも、私はどこかでそれを感じてしまう。あなたの期待は、今もそうであるように、きっとまた私にとって重荷になってしまう。応えられるか分からないのに…。私、疲れちゃったんだ。」

「だから友達でいいじゃない」

どんなに言葉を駆使しても、彼女は同じようなことを繰り返すばかりだった。だから、僕はもう完全に振られたと思い込んでいた。


結局結論は出さないまま、その日は別れることとなった。
電車に乗るまでの道すがら、お互いの近況や、共通の趣味の話や、くだらない話を少しだけした。

彼女はやけに楽しそうだった。

出会った頃と近しい、無邪気な笑顔を僕に見せ、なんだか胸が苦しくなった。

何故彼女は今、この表情ができるのだろう。

やっと彼氏彼女の面倒な関係性から解放されることの喜びがそうさせているのかな。僕はそう思った。

しかし、その久々に感じる2人の空気の心地よさに浸っていたくて、僕は自分を騙し、明るく振る舞っていた。

彼女は別れ際こう言った。
「また連絡するね。」

なんだかよくわからなかった。
普段は連絡は僕からするのが常だった。彼女の方から申し出るのは珍しい。

数日後、彼女からメールが来ていた。
内容は、私だけ誕生日を祝ってもらって不公平だから、僕の誕生日のお祝いをしたいということと、彼女の11月の予定だった。

僕はそれを好意的には解釈できなかった。
別れる気なのに、どうして誕生日を祝うの?プレゼントを僕に渡すのか?僕はそれをどんな気持ちで受け取ればいい?
しかし、平静を装って、こちらの希望の日程を伝えた。

それに対する返信が、一週間以上こなかった。
そもそも彼女に対して疑心暗鬼になっていた僕は、またイライラしてしまった。

そして、僕からまたメールを送った。
それがもう、事態に抜群の悪影響を与えることとなった。

「メール、なんでくれないの?」

「ごめんなさい。送ったと思ってた…。」

原因は単純に携帯の不調だった。しかし苛立ってしまった僕は、そのメールのやり取りの中で、僕は最初に彼女と別れ話をした日に伝えた言葉を、衝動的にもう一度伝えていた。

「俺は彼女のとても淡白な、一般的ではない価値観が心配なのだと真剣に説いた。俺のように話し合いをしようとする男とでなければ、そして、お互いの未来を2人で一緒に考えようとしなければ、あなたは絶対上手くいかない。幸せになんてなれない。1人で生きていく幸せもあるかもしれないが、俺は君にそうなって欲しくない。」

そんな内容だった。

これは、僕が彼女にとって、良い意味で響く言葉であると信じて伝えたものだった。その点に偽りはない。


彼女はこの言葉を聞いて、僕との別れを踏みとどまったものだと信じていた。

結果は最悪。


彼女の反応は、今までにないほど、辛辣なものだった。
「あなたの言うことを聞かなければ、あなたと話し合いができないような私では、幸せになれないってどういうことですか。私の幸せの基準をあなたが決めないで下さい。不愉快です。」


その時僕が思ったのは、やってしまったという想いよりも、何故あの時と反応がまったく違うのかということだった。


ショックを受けながらも、メールでのやり取りは無理だと判断し、仕事の帰りに彼女に電話をした。


彼女は泣いていた。


そう、全ては僕の勘違いだった。僕の伝えた言葉は、彼女にとって心無いものでしかなかった。

彼女はそれを隠していた。言ってもしょうがないことだと思っていた。
ただ、いきなり別れるのあんまりだから、話し合いに応じたのだという。

そしてこうも言った。
話し合いの中で、前向きになれたのだと。復縁を考えたのだと。



寝耳に水、僕はそんな状態だった。
あれだけ平行線を辿ったやりとりのどこで、そうなったのだ?


僕はなんだか何もかもがどうでもいいような気持ちに襲われた。
あれだけ「友達でいいじゃない」と言っておきながら、実は前向きに考えていたなどと、僕には感じ取れるはずもなかった。


そこで思い返したのは、帰り際の彼女の笑顔だった。
話し合いを続けていけば、僕と分かり合えると思っていたからこそ出た笑顔だったのだろうと思い至った。


しかし、もう遅かった。
前向きに考えていたが、メールの言葉を見て、傷ついた。
またどうしていいか分からなくなってしまった。
彼女は泣きながらそんなことを言ったのだった。


「相手が嫌だと思うことは、私は言わないようにしてるの」
彼女の矜持の一つだそうだ。
僕はその言葉を聞いて、正しくもあり、それだけではどうにもならないこともあると思った。特に男女の関係は。

欺瞞的な優しさで、綻びを隠し続けたら、やがて結び目はある日突然ほどけてしまう。それは必然でもある。


お互いつかず離れず、気遣いを忘れず、不満やしこりは残さず、日々を過ごすことができれば良いのだろう。
それが健全かつ、長く一緒にいるための秘訣だ。

相手への不満を包み隠さず言うことは非常に難しいと感じた瞬間だった。

彼女とはその電話で色々な話をしたが、あまり良く覚えていない。
ただ一つ決めたのは、また時間を置く、ということだった。
電話の後、一通だけメールのやり取りをした。

「落ち着いたら連絡します。泣いてごめんなさい。」

確か、11月の後半ぐらいにならないと時間が取れないと、電話では言っていた。



彼女からの連絡はまだない。



12月。季節は冬。僕はまだ確かに、彼女のことを好きだろうか。