僕が彼女に振られた話 

※このブログへお越しの、男女問わず恋愛に悩める方々へ

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 コチラです→俺が彼女に振られた後の話 - 俺ときどき僕


目に見えない不確かなものを人は感情と呼び
目に見えない確かなものを人は関係と呼んだ。

恋愛とは目に見えない不確かなものだ。
でもそれは感情として実在している。
多くの人々が、物語が、歴史がそれを示している。
確かにそれはあったのだと。

でも今の僕には恋愛が如何なるものなのか、まったく分からない。

恋は淡い感情。
誰かと寄り添うことで心が温まり、幸せな気持ちになること。

愛とは自己犠牲。
何に代えても大切なものを守り、その代償に幸せを得ること。

そのどちらにも当てはまらないというならば
それは恋愛と呼べるのだろうか。

恋愛感情とは、
僕がいま彼女を好きであるこの気持ちとは、
一体なんなのだろうか。





年が明ける前、12月も終盤を迎えた頃。
僕は彼女と再び話し合った。

どこかでこう思っていた。
「彼女も僕も、今までのことを反省し、お互いのことを十分に考えた。僕は彼女のために性的な営みを排し、会う頻度を抑えるのだろうし、彼女は僕のためにメールを少しだけ多く返し、どこか行きたい場所を提示するようになるのだろう。そうやって、少しずつ譲り合って、これからも上手くやっていくのだろう。例えそれが人からおかしな関係だと言われようとも…。」

そんなものはなかった。
僕はある意味彼女を見くびっていた。
いや、僕が甘かったのだ。

僕と彼女は、行きなれた街の、行きなれた待ち合わせ場所で、まるで恋人であるかのように待ち合わせた。
久しぶりに会った彼女の表情や声からはどこかすっきりとした印象を受け、僕はそれを好意的に解釈した。

僕もまた長い隔たりを超えて、彼女といつものように話すことができたことで、
またあの頃のように、2人で笑いあった日々に戻れるのだと穏やかな心持ちになっていた。

2人で遅めの昼食を取りながら、色んな話をした。
僕の職場に後輩が入ってきて、少し成長したような気分になったこと。
友人と旅行に行った時の、くだらない話。
お互いが好きなマンガの感想。
共通の友人の近況。

あえて核心には触れないまま、楽しいひと時が過ぎた。
「あぁ。やっぱりこんな感じでこれからもやっていけるんだ。」

そう思った。

そんな僕はアホだった。


彼女は先ほどまで話していた時の、朗らかな口調そのままにこう言った。
「やっぱり私。あなたとはもう続ける気はないんだ。」

その言葉はどこまでもいつも通りで、
どこまでも彼女そのままで、
どこまでも変哲のない素振りで僕に伝えられ、
僕の脊髄から心の奥底までを、深く抉り、そして突き刺さった。

僕は直感した。
確信した。

絶対にもうダメだと。
彼女との関係は、彼氏彼女の関係は、恋愛関係は、ここで終わりなのだと。

彼女の話し方で、表情で、全て分かってしまった。
彼女はもう僕のことを整理しきっていた。

僕はなんて馬鹿なんだろうと、自分を責めた。
彼女と話をするまでの1か月、ひいては2か月の間、
僕はどうしたら彼女とまたやり直せるのかしか考えていなかった。

彼女はその間に、僕のことを片付け始めていた。
なんて一方通行な想いだったのだろう。
呆れて言葉が出なかった。

たった一度のケンカでこうも崩れてしまうような関係だったのかと
凄まじい寂しさ、悲しみを覚えるとともに、
彼女はそういう女性なのだったなという冷静な思考も働いていた。

僕から言えることは、全て言った。
譲歩、譲歩、譲歩。
君といるための全ての譲歩を僕はしよう、と。
もう一度だけ、やり直すチャンスをくれないか、と。

彼女の回答は、今まで通り。
どこまでも身勝手で、それを分かった上での、真剣な決断だった。
「セックスしたいと思わない。手でするのも嫌。それがなくなってもまた問題は色々出てくるよね。いつだって会いたいなんてもう思わないだろうし…。彼氏彼女の定義は明確じゃないけど、そんな何もしない状態って友達でしかないよ。全部私のわがままで、あなたに言われた通り私は恋愛に向いてないんだと思う。あなたがどんなに譲歩しても、あなたはいつか私が変わるってどこかで期待してると私自身は思ってしまうから、辛いの。こんなことなら、誰にも迷惑かけたくないし、私は一人でいたい。」

どうだろうこの隙のなさ。
もはや言葉が出てこない。
エクセレントだ。
美しくすらある。

自分が悪い、私がダメ、あなたは関係ない。
どこまでも、彼女は彼女の話をする。

なんでそんなに自分の話しかしないんだ?
お前は今、誰としゃべってるんだ?
俺だろう。
俺との話をしろよ!
俺は考えてるんだ。君とどうすれば上手くいくのか。
どうして一緒に考えてくれないんだ!!

そんな怒りもあった。
でもそれはすぐに呆れへと変わっていった。

僕が彼女にできることは、本当に何もないんだな。
だから彼女にふられるんだな。

彼女との楽しかった思い出は、全て砂上の楼閣。
ひとときの幻に過ぎなかった。

でも、十分に分かっているはずのことだった。
彼女は、この目の前にいる一人の女性は、人間は、そういう人だったのだと。

そして僕は引いた。
もうそこには何も残されていなかったからだ。

年末年始、やり直した彼女と僕はどのような未来を描くのだろうと、
不安ながらも希望を持って、これまでの日々を過ごしていた。

でもそれは無意味だった。
全てが霧散した。
僕はどこかで、自分が許されると思っていた。
だけど違った。
彼女が、彼女自身を許さなかったのだ。
誰かのために、変わることを。
僕のために、変わることを。

僕は悲しかった。
彼女がまた殻の中に戻ってしまった。
その原因は僕自身でもある。
僕の心無い一言がそうさせてしまった。

「今後誰かと付き合うの難しいんじゃないかな」

過去に僕が無神経に放った言葉だった。
例えそうであったとしても、口にしてはいけなかった。
彼女は繊細で、それでいて我儘で、一度決めたことは曲げない芯の強さを持ち合わせていた。

あぁなんて厄介なのだろう。
でも好きだよ。

2人は改札の前で別れた。
以前のように、もう振り返りはしない。